スゴくてコワい方程式 -書評- E=mc^2

方程式というものをこれほどわくわくしながら読めるとは思わなかった。

エネルギーは、質量に光の速さの二乗をかけ合わせたものと等しい。

その質量には、原子のような目に映らないほど細微なもの然り。

太陽のような目に入りきらないほど巨大なもの然り。

そして、ありとあらゆる質量を持つもの然り。

「無限のスケーラビリティ」を感じさせる本書は、下手なSF小説を読むよりエキサイティングだった。

もっともスケールの大きさを感じたのはp275「インドのバラモンが天空に目を向ける」での部分。
以下、長くなるが引用
いかに太陽が巨大でも、永遠に燃え続けることはできない。E=mc^2という方程式にもとづいてエネルギーを無駄なく発生させる暖炉といえども、太陽系全体を暖めるためには膨大な量の燃料が必要だ。
(中略)
 自分の身体から毎日7,000億トンの水素を削っていく。あと50億年もすれば、もっとも手軽に使える燃料は底をついてしまうだろう。

太陽をそのような目線で見たことがなかったのでこの文章はとても新鮮なインパクトを与えてくれた。

この方程式が知的好奇心を刺激するものであることは疑いようがない。
しかし、たった1グラムの質量がこの方程式どおりの変換をされるだけで、莫大なエネルギーを発生させること、「原子爆弾」が E=mc^2 をもとに生まれたことを考えると、とってもスゴいが、とってもコワいことも紛れもない事実だ。


東日本大震災以降、原子力発電のあり方についてさまざまな意見がでている。
原発の仕組みを理解するよりも(あれはタービンを蒸気で回しているだけ)、なぜあれほどまでに効率がよいのか、そしてなにが危険なのかを、本書の公式を読み解きながら理解することをおすすめする。