父親になるまで【急】

子供を授かり産まれるまでを3部にまとめた「父親になるまで」シリーズも最終章。

長いようで短い十月十日。

出産までのあれこれ、産後のおはなし。

編集後記もあるぜよ!

思いのほか、長くなったので続きから。

ついに出産


健診も臨月になると、「出産予定日」というものが決まります。
この調子でいくと、この日に産まれそうですね。という日。

そして、予定は未定とよく言われるように、我が家も予定日6日前に陣痛が来ました。
朝から微弱陣痛が起こっていて、陣痛の間隔は6~8分でした。陣痛自体も弱いので、嫁も案外平気なふうでしたが、掛かり付けの産院に電話をすると、「入院する準備をして来てください。」とのことだったので、最低限必要なものをまとめて出発。

入院中の部屋は、産院によって色んなタイプがあるらしいです、母子(別室・同室)、部屋のタイプ(個室・大部屋)など。
私たちの場合は、母子同室の個室。ランクでいうと一番お金の掛かるタイプですが、初産ということ、私が寝泊まりできることを考慮して決めました。高いといっても、出産一時金もちょうど増額されたこと(2009/10に38万から42万に引上げ)もあったので、実質の負担は16,000円程度でした。

そんなこんなで、産院に到着したのが午前10時ごろ。
さっそく個室に案内してもらい、陣痛を測定する器具を取り付けてベッドで横になります。

今考えると、ここから夫のできることはこの2文字しかありませんでした。





「雑用」






現実です。
      これが現実。





陣痛のほうですが、正午を過ぎて、夕方になろうとしてもなかなか強くなりません。間隔はすこしずつ狭まってきているのですが、分娩台にあがる目安は1分間隔だそうです。このときまだ3~5分。

それでも陣痛の痛みは増していることが、表情で分かります。
測定する器具の針がぐぐーっと上昇すると陣痛が来るのですが、それが治まるとケロッとするので、陣痛はとても不思議な現象だなと思ったりしました。


時間は流れて午後8時。

ついに分娩台へ向かう段階になりました。
「ついにか!」と今までの10ヶ月がリフレインし、ぐっと来るものがありました。

立ち会い出産ということで、私と義母の二人も一緒に分娩室へ向かいます。

分娩台に上がってからの夫への最後のさくせん。

「ごちゃごちゃいわない」

耳元で「頑張れ!もう少しだ!いいぞ!」などと言われなくても、必死に頑張っています。
「お産は集中力だよね(嫁談)」という言葉にもあるように、ごちゃごちゃ言って気を紛らわせることはかえってマイナスに働きます。私はどうしたかというと、「空気」になるよう努めました。それはもう完全に気配を薄くするくらいの気持ちで。HUNTER×HUNTERでいう「絶」ですよね。あれをイメージしてやってました。

妊娠中は嫁と一緒にソフロロジーの練習をしていたこともあり、ゆったりした呼吸と、精神状態を心がけることが夫である私にも役に立った瞬間でした。
ありがとうソフロロジー!


分娩中、唯一できたのが「呼吸の誘導」くらいで、陣痛で乱れる呼吸をそっと落ち着かせることが立ち会い中にやれた、たった1つの仕事でした。
間隔が1分ほどになり本陣痛に入り、強くなる痛みを拒むことなく受け入れた1時間半。
ついに!頭が!髪の毛が!少しだけ!!と心は弾みました。が、「絶」です。まだ。

それから、何分もしないうちに頭が出た!とおもうと、するん!と産まれてきました。元気な産声!
その瞬間、すこし緊張気味だった空間は、ほっと安堵の雰囲気に包まれたようでした。めでたく「絶」解除です。

一番最初に母親になった嫁のもとへ。感動の初対面です。10ヶ月もそばにいながら初めて顔を合わせる瞬間。そしてそんな貴重な場に居合わせられること。これが立ち会い出産の最大の恩恵なのかもしれません。

母の腕に抱かれ眠る赤子


母子同室の場合、産後の処置を施したあとはすぐ部屋に戻ります。「別室の保育器で退院まで会えなかった。」なんていう人はびっくりするかもしれません。そのまま赤ちゃんとの初コミュニケーションである「カンガルーケア」を行います。

カンガルーケアとは、出産後すぐに、赤ちゃんをお母さんの素肌の胸の上に抱っこすること。

子との絆を深めたり、母親としての自覚を付けたり、素肌に触れることで、赤ちゃんが安心したり、常用菌を母親からもらうことで免疫力を高めたり、と様々なメリットがあるのがカンガルーケアです。これには賛否両論あるようですので、夫婦でよく話し合ってから決めるのが良いでしょう。

その後は産院にもよりけりだとは思いますが、5日間お世話になりました。
産後のケアはフルサポート体制で、沐浴、シーツの交換、オムツと服の補充、食事、などなど心強い限りでした。

さらに分からないことがあると、どんな些細なことでも親身になって教えてくれたので、退院してからの不安も軽減されました。産院で教わっておいてよかったこと。
  1. 沐浴の仕方(温度や洗い方、抱き方まで詳細に)
  2. 授乳の仕方(授乳中の姿勢は夫も覚えておくと意外と役立つ)
  3. オムツの替え方

前回、胎名で呼びかけるメリットは何か?という話をしましたが、それはズバリ、
「子供が自分たちの声を覚えてくれる」
です。

お腹の中にいるときから、すでに耳は聞こえているそうです。
生まれたての我が子に声をかけると、その声に反応したので驚きました。

そういう意味では、やはり育児は出産からでなく妊娠初期から始めるのが理想だと改めて感じました。

そしてもう1つのメリットとして、「父性の刺激」があります。
妊婦さんの母性というのは、日増しに大きくなる印象を受けますが、男親の父性というものはなかなか育ちません。
生まれてから子供と接する。と心では決めていても実際うまく接することができない人もいるようです。
手をあて、声かけをすることで、反応がある。その反応を感じて「父性が芽生える」それを続けていくうちに「父性が成長する」。
私も10カ月の声かけの成果があって、初めて目にする子にも自然に呼びかけることができました。

毎日少しの声かけが、10か月後に大きな実を結ぶので、ぜひ実践してもらいたいと思います。

これまでのまとめ


  1. 掛かりつけ産院をしっかり持つこと
  2. 初産は母子同室がとてもおすすめ
  3. 夫婦の意思疎通をしっかり取っておく
  4. 不安は知識でカバーできる場合が多いので、妊娠・出産に関する本はできるだけ読んでおく
  5. 胎名をつけて積極的に声かけをしよう
  6. 妊娠検診・出産一時金など国が負担してくれるものは徹底的に活用

夫がしたほうがよいこと
  1. 広い心を持って接する
  2. 体感できないぶん、知識でサポート
  3. 家事全般をこなせる度量をもつ
  4. 三毒追放(怒らない、妬まない、愚痴らない)
  5. なりたい父親像を描く
  6. 10か月は母親の健康なくして子供は成長しないことを肝に銘じる


出産は大きな出来事でした。

また、私にとって貴重な経験だったし、人生の糧となる大事な体験をしました。


編集後記「命について言いたいたった1つのこと」



「親の資格」なんて言葉にするものじゃないけれど、授かったかけがえのない命を育めるのは、両親です。そして、私自身が親となり改めて親の有難さ、責任、喜び、色んなものを感じ始めています。確かに苦労がないとは言えないけど、親になって気づく新たな感情は素晴らしいので親になることに早いも遅いもありません。


少子化少子化と叫びつつも、ニュースでは子供に関する悲しい事件が起こっています。
世の中には赤ちゃんポストというものができ、私の住む高知県は中絶率が全国ワースト5に入る悲しい記録を持っています。

経済的に厳しくて、片親になるから、苦労させたくない。

後付けの理由を言うなよ。

泣きやまないから?躾のつもり?

子供を見る自分の顔を見てみなよ、泣いてる理由がわかるから。

命に重いも軽いもないけど、都合で弄ぶような真似だけはしないでください。



さて、最後になりましたが、3部にわたるドキュメンタリー。長かったですね。

序・破・急とすべて読んでいただいた方、ありがとうございます。

この3部作が誰かのお役に立てれば幸いです。