熱い！切ない！なにより笑える - 漫評- 宇宙兄弟

2006年7月9日、月に飛翔するUFOに遭遇し「二人で宇宙飛行士になろう」と約束した南波六太（なんばむった）、日々人(ひびと)兄弟。時は流れ2025年、その時に交わした約束通り、日々人はNASAの宇宙飛行士となって月に向かおうとしていた。その一方、弟の悪口を言った上司に頭突きして自動車開発会社を退職(実質的にはクビ)し無職となった六太。再就職も上手く行かず意気消沈していた六太の元に、事情を聞いた日々人からメールが届く…。

お前はできるんだからもっと自信持てよ！といいたくなるくらい、ここぞという時に弱い兄が、なんとも人間くさくて好き。
知ったかぶってみたり、勘違い妄想が爆発したりする姿に、今までの自分の人生と重ね合わせてみる部分も多くて共感。
そんなメンタル的に弱い一面をのぞかせつつも、弟の日々人に追いつけ、追い越せと、日本人宇宙飛行士の試験に挑戦する姿に、ぐっと熱くなる。

作者の笑いのセンスが自分のそれとどんぴしゃなのも良かった。
サンタのバイトをしている六太の前に、「アスパラガスをこの世から消して欲しい」とお願いする子供の表情が最高にツボだった。
それと、アポもいい味だしてる。くんくん。

ISS（国際宇宙ステーション）や、JAXA（宇宙航空研究開発機構）、ジョンソン宇宙センターもでてくる。宇宙飛行士になるための試験内容もリアルに描かれている。宇宙のことに関する知的好奇心をも満足させてくれる漫画でもある。

たとえば、月面の砂（レゴリス）は細微な粒ながら、結晶が尖っているため、宇宙服のすき間などに入り込むと、船内の機器に不具合を生じさせたり、また、人が吸い込むと、肺炎などを引き起こす原因ともなる。などである。

私も中学校のころ、ニュートンなどの雑誌を読んで宇宙の不思議に出会った時の、なんともいえないわくわくする気持ちを思い出した。