プルの境地 ー書評ー 実践!多読術

読書を始めてみたものの、

p.5 はじめに
「そもそもどんな本を読めばいいのだろうか?」

話題になっている本を手に取っている人。
1冊をじっくり隅々までしゃぶり尽くそうとしている人。
大事なところをメモしてそれで満足してる人。

心当たりのある皆さん。

速読より「多読」、単読より「併読」、読書の効率も、濃度もパワーアップさせないと、もったいないことは間違いなさそうです。


本書、「実践!多読術」は、万人に平等で有限な時間のなかで、自分が求める本にたどりつく時間を短縮し、本に出会う確率を増やす「多読・併読のすすめ」を著者自身の読書術を交えて紹介した一冊。

目次:角川書店・角川グループより引用。
はじめに
第一章 超併読のある生活
 私は一体、どれだけの本を併読しているのか/まず本はリビングでざっと読み、仕分け作業を行う/"格好のいい"蔵書棚を作るのが私のライフワーク/併読のためには、本はさまざまな場所に置く/好きな書店で気の利いたプレゼンテーションに出会う喜び/私がアマゾンを重宝する理由は配達能力だけ/理想の書店はどのような書店かと言うと....../電子書籍に関して私が言いたいこと/これから成功するかもしれない書店のビジネスモデル
第二章 賢者の読書、愚者の読書
 古典は他人に任せて、新刊を読もう/ハウツー書や投資本は捨てて経済学に学べ/自然科学に興じることが何より大切な理由/ノンフィクションは、イギリスとフランスが抜きん出ている/今は翻訳がうまくて速い。いい時代だ/軍事本を使って、合理性と戦略論を学ぶ/"賢者の読書"で準備して、人生のサイコロを振ろう/"賢者の読書"の四つの効果効能とは
第三章 経営者は自然科学に学べ
 仮説検証は経営の仕事、だから自然科学を学べ/マーケッターは、把握できないものに手を出すな/営業部長が歴史読み物に学ぶべき点とは/日本の軍事記録は人心掌握術を学ぶべき教科書/理系出身者が重要視される時代は変化の時代だ/ノンフィクション・ミステリーで、常識を疑う心を養う/突然ですが、英語力で身につける論理的思考/悪役の人物伝に学ぶべき点が多い/バリ島のプールサイドで読む白クマ物語は楽しい/転勤するのであれば、それこそ時空をずらす読書術を/コース料理には、前菜や箸休めも必要になる/"賢者の読書"が夢見る力を与えてくれる好例
第四章 書評の技術
 書評とキュレーター/書評を書く場合のいくつかの注意点と気構え/書評をコンスタントに書くための知恵とは/書評は工芸品。自己満足でマニアックな世界だ
第五章 賢者の蔵書棚を作ろう?厳選ブックガイド
 文化・人生編/社会派ノンフィクション編/歴史読み物編/ミステリーのようなノンフィクション編/人物伝編/経済・経営編/科学読み物編/写真集/その他
おわりに

多読を超えて、乱読のもたらす効能
p.66
"賢者の読書"の効果効能は、夢見る力を養い、常識を疑う力をつけて、モノの見方を多面的にして視野を広げ、アイディアを豊かにすることだ。

宇宙創世の話から、日本経済の歴史の流れ、環境問題に関する話から、人類の起源や、風俗習俗など、ジャンルもばらつかせる「意図的な乱読」を取り入れることで、自然と脳のいろいろな部分を刺激し、鍛えることができる。

多角的な思考が身に付くと、あらゆる場面において、双方向に物事を考えられるようになるし、視点の縮尺を自在に広げたり、狭めたりすることができるようになる。

時には歴史に基づいた思考、時には常識に捕らわれない自由な思考を得ることができるのが「乱読」なのである。


第四章 書評の技術


本書は、太っ腹だ。

本の読み方のみならず、書評についても指南してくれているのだから。

p.108
ともかく書評ブログを書くことはお勧めだ。月に一冊でもきちんと書評すれば、文章もうまくなるし、気持ちが前向きになる。

「書評なんて私には到底むり」などといわず、自分の琴線にふれた箇所などをアウトプットすることを私もお勧めする。
書評までいかなくとも、とりあえず「読んだ」という読書記録をつけておくことは、「新書がベスト」でも推奨されている。
Twitterや、メディアマーカーブクログなど様々なサービスがあるので、それらを上手に活用しよう。

書評を書く場合のいくつかの注意点と気構え
本を読むスタイルや、書評の賞味期限、文章のフォーマットはどうするべきかという具体例は、完全に我流の私からすると「これは取り入れたい」と思える箇所多し。書評ブロガー必見です。


第五章 賢者の蔵書棚を作ろう


p.120~186まで著者が厳選した本を紹介している。
新書がベストでは、レーベル評を紹介していたが、著者の厳選本の中に新書はない。数が多すぎるのだそうだ。
であるがゆえに、本書と新書がベストを併読すると、より一層効果的かもしれない。

p.188 おわりに
つまらない本は最後まで読む必要などない。無理やり記憶しようとして本を読むなど無駄だ。つまらなかった本は、さっさと忘れる。その代わり、どんどん本を読む。併読する。そうやって、自分に合った本に出会う確率を高めたほうが断然得なのだ。

逆説的になるが、自腹を切って買うことで、読む覚悟を決めるとともに、つまらないと思いながら最後まで無理やり読まない覚悟も同時に持たなければ、併読・多読の実践は難しい。

この「読む覚悟」「読まない覚悟」を常に持ち続けることで、「この本で自分が求めている箇所はどこだ」「別の本ではこういう視点だったが、この本はどうだ」という意識を持って本が読める。

つまり、本から情報を引き出す姿勢「プルの境地」に立てるということ。

「そもそもどんな本を読めばいいのだろうか?」

それを見つけるための方法は、本書で惜しみなく紹介されている。

時間は平等。

それなら早く始めたもん勝ちなのはいうまでもない。