堀江貴文の一貫性(Identity) - 書評 - 徹底抗戦

あまりにも赤裸々。
本書「徹底抗戦」は元ライブドア社長、堀江貴文氏初の書き下ろし自叙伝であり、ライブドア事件が起きる前から現在までを赤裸々に告白したドキュメント本。

favicon 六本木で働いていた元社長のアメブロ


目次(favicon セブンアンドワイ - 徹底抗戦より引用
予兆―“虎の尾”を踏んだ、ニッポン放送株買収と衆院選出馬
魅惑のフジテレビ
いざ、買収へ
敵対的買収
意外な「援軍」
立候補した理由
日本にも大統領制を
幻のソニー買収作戦

青天の霹靂―逮捕、そして勾留へ
強制捜査
証拠隠滅なんて…
ストップ安
本当の戦犯
野口英昭氏の怪死
後任社長が平松庚三氏になった理由
私は仕手戦の株屋なのか?
容疑者ルームにて
逮捕の日
勾留決定
検事、取調べ開始
独房の日々
気の利く差し入れ
風呂でオナニー
嗚咽するほど泣いた話
熊谷氏との邂逅
読書の話し
刑務所の中
起訴後勾留
温かい刑務間
ラジヲの時間
内藤検事登場
自分との闘い
保釈の日
徹底抗戦―われ、検察とかく戦えり
保釈直後
対人恐怖症の克服へ
初公判へ向けて
徹底抗戦!
公判前夜
世論の変化
究極の「政治屋亀井静香
地裁判決の日
ゴルフ道
税務調査
控訴審
上告へ
ライブドア事件の本質

真相―いまだから書ける、あんなことこんなこと
株主総会のこと
世界的企業を目指した理由
SBI北尾吉孝氏のはなし
拝金主義について
悪役(ヒール)へ
突撃記者・日本テレビ木下黄太氏
検察制度改革
保釈金のこと
過剰報道
懲役の恐怖
将来のこと
その後のライブドア
人を信じるということ

faviconライブドア事件が起こったのは今からもう3年も前の出来事で、ぼや~っとしか覚えていない人も多いのではないだろうか。

プロ野球参戦、ニッポン放送株買収、衆院選への出馬、そして逮捕。
マスコミが報道する情報でしか堀江氏の動向を見ていなかった人達は、おそらく本書を読まない限り「悪者」「金の亡者」「強欲」と決めつけているのではないだろうか。

かくいう私も、本書を読了するまで、堀江氏に対するイメージは「野望のためなら何でもやる人物」だったし「選挙にまで出て何をしたいのか分からない人物」だった。
そしてライブドア事件が起き逮捕され、自分の罪を認めるどころか「徹底抗戦」とは何事か!とも思った。

だが、本書に出てくる堀江氏は、たしかに「野望」の強い人物だったが、想像していた人物像とは異なる箇所がいくつもあったのも事実だ。彼が逮捕され、拘置所や留置所での顛末まで事細かに書き綴っている事などから、本書に記されている出来事の信憑性はかなり高いと思ったし、作り物ではない叫びを感じた。

彼はただの金の亡者だったのか?

テレビ局に買収を仕掛けたり、様々な分野に手を広げて行った経緯を見ると、確かに「すべては金の為」と受け取られてもおかしくない。しかし、彼には「ライブドアを世界一の会社に押し上げて早々にリタイアし、宇宙開発プロジェクトを立ち上げる」という大きな目的があった。そして経営責任者として、
  1. 会社を大きくする
  2. 株主の利益を優先的に考える
  3. 社会貢献につながる

という一貫した理念のもと行動していたのを考えると「金」が主目的では無かったのではないだろうか。

結局ライブドア事件の犯人はホリエモン

これについては、本書全体を通じて「否定」している。
最終的に、刑事事件に発展し、社長の座を辞任する形で株主に迷惑を掛けたことで「経営責任」を取る覚悟だが、司法の条例と照合しても納得の出来ない罪状を突きつけられた事に関する「刑事責任」は断固これを拒否し、認めていない。

じゃあ、なぜ逮捕された?

そこは、本人も納得のいく説明も得られないまま獄に入れられたと語っている。
「何か有罪になるような事をしてたんなら、素直に認めてさっさと懲役を受けますよ」と言うくらいなのだから、そうなのだろう。堀江氏ほど、理詰めで物事を白黒はっきりさせないと気が済まない人間はそういないと思うので、これが虚言であるとは考えにくい。

ライブドア事件での罪の所在は、、

favicon徹底抗戦 - 池田信夫 blog
しかしアメリカでは資本市場によって新しい企業が生まれ、産業構造が大きく変わったが、日本では挑戦者がほとんど壊滅した。
(中略・・・)
彼らのほとんどは失敗するので数が必要なのだが、成長する前に検察によって根絶やしにされてしまった。日本経済に与えたダメージという点では、ライブドアより東京地検の罪のほうがはるかに大きいと思う。


本書で学んだ事

  • 司法には少なからず闇がある。(「疑わしきは無罪」の一貫性の欠如)
  • 古き悪しき資本主義の概念がゆがみを生む。(起業家にとってマイナスとなる要素)
  • 「善悪」でなく「都合」で裁かれる可能性がある。(特に「国」を相手にした場合)


詳細は是非とも堀江氏の肉声に近い本書で確かめてほしい。
この国がどういう仕組みで動いているのかが垣間見えるはずだ。