若者を若者(じゃくしゃ)たらしめたもの 書評 - 若者はなぜ3年で辞めるのか?

本書は2006年に上梓されたものだが、3年経過した今現在でも「派遣切り」や「就職氷河期」「サービス残業」や「自殺者の増加」といった社会問題は、解決の糸口を見つけるどころか、その傷口はさらに広がっていると言える。

著者が糾弾する「情状酌量の余地のない人たち」とは誰なのか?

「3年で3割辞める」という新卒離職者、ニートフリーター

そういった若者を責めたてる前に、いま一度、本書を手に取る時ではないだろうか。

本書「若者はなぜ3年で辞めるのか?年功序列が奪う日本の未来」は、日本の若者の「雇用機会」と「やる気」を削いでいる「エセ成果主義」への警鐘を鳴らす一冊。

はじめに 「閉塞感の正体」を見きわめる
第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
第2章 やる気を失った30代社員たち
第3章 若者にツケを回す国
第4章 年功序列の光と影
第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
第6章 「働く理由」を取り戻す


年功序列が終わったと言われて久しい。
いまや、上場企業の9割で成果主義が取り入れられている。


時代は「成果主義」という新しいステージに移り変わった。やる気や才能、キャリアビジョンで年齢に関係なく対価を得られるようになった。


はずだった。


若くても活躍できる時代の幕開けとは名ばかりの、「成果主義」という皮をかぶった「年功序列」が若者の未来を、やる気を、才能を、奪っていると著者は語る。


原因その1 わがままな若者、ギャップのある業務内容


 新卒でしっかりしたキャリアビジョンを持ち、自己研鑽を惜しまない優秀な人ほど就職活動の過程で「仕事に対する意識が高くなる」という。
 これが、理想の業務と、実際に働き始めたときの業務とのギャップを生んでしまう。
 「こんなことをするために入社したんじゃない」とフラストレーションがたまってしまうという理由。

 しかし、会社側から見ると「忍耐力がない」「わがまま」と映ってしまう。
 

原因その2 不況による新卒採用数の大幅な縮小、派遣での埋め合わせ


 バブルの時代は、企業から「ぜひ我が社に!」といわれるほどの超売り手市場。
 もちろん泡が弾けてしまえば、背筋が凍りつくほどの氷河期に変貌する。

 そうなれば、採用数は激減し、雇用は縮小する。人件費を抑えるために、派遣や臨時で埋め合わせをおこなう。


原因その3 偽りの成果主義


 年功序列を脱ぎきれていない、「一定の年齢以上の、成果を挙げた人」にしか適用されない中途半端な成果主義

 若者がまっとうな評価を受けられない企業がまだ多く残っている。

原因その4 「情状酌量の余地のない人たち」


 この「情状酌量の余地のない人たち」は、ずばり政治家だ。

 広く国民のためにある政治家が、「公務員改革」と掲げたマニフェストが、「定員減による人件費の削減」だった。

「2010年までの四年間で、公務員5%削減」

この5%というのは、「人件費の」ではなく「公務員の数の」である。

そして理解に苦しむのが、

「今後四年間、新規採用を二割以上減らし、自然減で対応する。」

 要は、2006年~2010年の四年間で、目標値の5%にあたる人数を解雇(若年層が多くを占める)し、新規採用という若者の雇用機会を奪うという、トンデモマニフェストだったのだ。

 Barack Obama が不況にあえぐ米経済を立て直すために、赤字を垂れ流す会社は国有で再建を計り、公共工事や環境ビジネスを立ち上げて雇用を拡大する経済対策をしている。

日本の政治家すべてが悪いといいたいわけじゃないし、すべてを政治家に押し付けるのは間違っていると思っている。

だが、しかし、働く機会を奪うようなマニフェスト、若者に負担を押し付ける規制緩和のあとに「もっと働け」では筋が通らない。



就職とは、ただ職に就くだけのものではない。

自己価値を高める努力ももちろん必要だし、何をしたいかを明確にすることも大事だ。
そして、自分が全力で働ける場所をしっかり探すことがなにより自分のためだということを念頭においてほしい。あなたの未来を奪われないために。