マルキール、エリス対談(1)貯蓄を始める【文字起こし】

ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者バートン・マルキール氏と、「敗者のゲーム」の著者チャールズ・エリス氏というビッグネームの対談動画が非常にわかりやすくためになったので、こちらでも紹介します。YOMIURI ONLINE(読売新聞)のサイトで、動画に字幕がリンクして表示されますが、テキスト形式で読みたい人のためにも文字起こししています。



司会:さっそくですが、マルキール博士、私には投資の最も基本的な要素は貯蓄であるように思われます。貯蓄がない、つまりお金がなければ、投資はできません。そこで、貯蓄が上手になるにはどうしたらよいでしょうか?

マルキール:そうですね。最も簡単な貯蓄法、あるいはお金を使わない方法は、当座預金や財布の中に最初からお金を入れておかないことです。職場で401(k)プランに加入して、給与から天引きしてもらい、手取り額を減らす。これが明らかに最も簡単な貯蓄の方法です。この国(米国)で私が驚かされるのは、あまりにも多くの人が401(k)プランに実際に資金を拠出していないことです。

マルキール:この状況は、企業がマッチング拠出、すなわち従業員が拠出する額と同額を積み増してくれる場合でさえ変わらず、多くの人がマッチングの機会を逃しています。年金拠出は収入が一定限度以下の場合には税控除の対象にもなりますから、私は天引きが最も簡単な貯蓄法だと思います。もう少し貯蓄をしたければ、IRA(個人退職年金制度)を通じて行いますが、絶対にまず資金を入金し、定期的に拠出するべきです。拠出をやめてはいけません。

司会:ただ、本書では債務やクレジットカードの利用についてもかなり触れていらっしゃいますね。

エリス氏:どんな人も、クレジットカード債務に足を踏み入れてはなりません。利用額に加算される金利費用やペナルティは法外であり、クレジットカード債務は避けなければなりません。それが貯蓄への第一歩です。次のステップは、バートンもよく言うように、規律ある貯蓄を続けること、そして貯蓄が給与天引きされ、手取り額を減らすことです。断然これが一番いい方法で、最大限活用すべきです。


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司会:マルキール博士、貯蓄についてはよく話されていますが、早めに貯蓄することも重要ですね。時間と貯蓄にはどのような関係がありますか?

マルキールアルベルト・アインシュタインはかつて、人類最大の発見は複利であると語ったと言われています。今日貯蓄した1ドルは、例えば6% や 7%で運用できたなら、来年には$1.06、再来年には $1.13になります。事実、チャーリーと私がこの本の中で取り上げたことのひとつに『72の法則』というのがあり、これがすばらしい。例えば、貯蓄を複利利回り15%で運用するとしましょう。72を15で割ると、そのお金が2倍になるだけの年数が分かります。ですから、この場合は、5年未満で貯蓄が倍になります。

司会:私が思うに、残念ながら多くの人は退職が近付いてから貯蓄が足りないことに気づいたり、あるいは結婚してから貯蓄について考え始めますが、これでは少し遅過ぎます。エリス博士、貯蓄の開始が遅れた人はどうしたらいいのですか?

エリス氏:何年も経ってから、できたかもしれないこと、おそらくはそうすべきだったことをしてこなかったことに気づいた時には、遅れを取り戻すために大胆かつ抜本的な行動を取る必要があります。魔法のような解決法はありません。

司会:例えばどのようなことですか?

エリス氏:そうですね、まず費用削減です。そして大きな費用削減の対象としてまず考えなければならないのは、住まいです。あなたは適度な大きさの家に住んでいますか?そんなに大きい家に住む必要がないなら、もっと費用のかからない家に住むことを真剣に考えてください。もっと簡単にできるもう一つのことは、車を買う場合、新車ではなく中古車にすることです。

エリス氏:支出水準を下げるためにできることはたくさんありますが、いつも満足でき、かつ好ましいことであるとは限りません。時には犠牲を伴うこともありますが、自分自身のために貯蓄をしていること、そして将来自分が望む生活水準で生活するためにお金が本当に必要な時、その貯蓄が報われるということを心に留めておいてください。